2017年11月25日土曜日

初冬のケバエ・・・和名なし

日曜日、数年振りのウスタビガやら
例年通りのニトベエダシャクなどを見て
神戸南部でも初冬を感じる季節となった。

てけてけ歩いているとブロック塀に止まるケバエがいた。




同じ日なのでたぶん同種の雌雄だと思う。

ケバエと言えばゴールデンウイーク前後に林縁とかで
わらわら飛んでいるハグロケバエBibio tenebrosus が頭に浮かぶ。
幼虫は毛の生えたウジ状で、冬場に落ち葉の間で集団でうぞうぞしている。

が、今回のはそれよりひと回り小さい。
「新訂 原色日本昆虫図鑑3巻(北隆館)」を見ると
この時期に出るこのタイプのケバエはアシブトケバエと
ウスイロアシブトケバエの2種なので、
全体が黒いというアシブトケバエではなく、ウスイロの方かな?
を思ったが、どちらでもない気もする。。 そこで

PACIFIC INSECTS Vol.2,no.4(1960)に
「REVISION OF THE JAPANESE BIBIONIDAE」がある。
少々古い文献だが日本産ケバエ科の総説を参考にした。
ネット上にpdfがあるので、検索したら見られるとおもう。

同文献で9月以降に出現する Bibio属は以下の5種。
Bibio flavihalter ウスイロアシブトケバエ
Bibio gracilipalpus アシブトケバエ
Bibio metaclavipes
Bibio pomonae
Bibio montanus

後ろの2種は9月までだったり、高山性だったりするので違うだろう。

文献は英語なので斜めに読んだが、
前脚脛節の外棘と内棘の長さの比や後脚脛節と付節の太さ、
生殖端節(gonostylus)の形などが分類の決め手になるようだ。
ちなみに生殖基節はgonocoxite

色彩も記載されているがハエの掲示板を見ると個体変異が大きいらしい。

持ち帰った虫を拡大して見る。
♂背面
Bibio metaclavipes? ♂
体長は約10mm。

♂側面
Bibio metaclavipes? ♂
♂後脚は腿節と脛節が棍棒状に太くなり、附節も太い。

♂の顔と前脚
Bibio metaclavipes? ♂
内棘は外棘の約3/4と大きい。ウスイロアシブトケバエでは1/3と小さいようだ。

♂腹端腹面
Bibio metaclavipes? ♂
文献の図と同じ方向から撮ってみると、Bibio metaclavipes の図とそっくりであった。
本種の分布は文献では九州のみだったが、採る人がいなかっただけだろうと無視。
ただ色彩の記載も一部あわないので、?付きとしておく。

♂腹端を後方から
Bibio metaclavipes? ♂
生殖端節は先端が上方に90度曲がっている。

♀背面
Bibio metaclavipes? ♀
♂と比べて黄色い部分が多い。

♀側面
Bibio metaclavipes? ♀

♀頭部と前脚あたり
Bibio metaclavipes? ♀
♂と違って複眼は小さく離れている。ケバエは皆そう。
というか双翅目全般の傾向。

おまけ
他の採ってないかな?と標本箱を見てみたらあったやつ。
アシブトケバエ Bibio gracilipalpus ? ♂
2013年11月19日に採集したもの。
脚部が淡色なのでウスイロかなと思ったが、交尾器は、、
腹端腹面
乾燥して曲がっているので角度を変えて上方斜めから。

生殖端節の形はアシブトケバエの図に近い。

前脚の拡大
アシブトケバエ Bibio gracilipalpus ? ♂
内棘は小さい。

初冬に出るケバエは色彩だけで同定すると痛い目見そう。


ではまた

2017年11月18日土曜日

乙姫様の男の子

めぼしい生き物がいないので、、、
昨年刈った積み笹を見てみた。
と言っても、ほぼ腐葉土の状態。
これを洗濯ネットに入れてビニールシート上で篩う。
(洗濯ネットは過去記事参照--->「笠かむり」
(この積み笹の過去記事--->雪が無くてもいるみたい・・クモガタガガンボの1種

シート上に落ちた細かい土と小昆虫の塊を持ち帰り。

次の日、他の虫が食われないようにクモとかの捕食者を回収。
カニグモ科その他ハエトリグモ・コモリグモ?とかサラグモ科?の子供が大半。

その中で目を引いたもの。
触肢が生殖肢(移精器官)なので♂である。
腹部に硬化した板が見えるので、最初ダニグモの仲間かと思ったが、
眼が8個ある。
ダニグモの仲間は6眼なので候補から外れた。
背面。
体長は約1.5mm。小さいけど大人である。

ネイチャーガイド日本のクモ 増補改訂版(文一総合出版)」でパラパラ絵合わせ。

お、オトヒメグモに似てる感じ、、で
「日本産クモ類(東海大学出版部,2009)」で触肢を確認。
触肢の図が一致したのでオトヒメグモでいいようだ。

オトヒメグモ Orthobula crucifera 
*********************************
ネコグモ科 Corinnidae
背甲と胸板にはゴルフボールみたいな多数の小さな凹みがある。
第1脚と第2脚の脛節と蹠節には対になる刺列が並ぶ。
上顎の前面に刺がない。

♂の腹部背面全体、胃外域、腹部腹面中央は硬化する。
*********************************

右触肢内側
左触肢外側
バネ状の栓子が透けて見えてる。

小さいクモってなにかの幼体ばかりと思っていたけど、
結構大人のクモも混じっているみたい。

ミリ虫ならぬミリグモの世界も結構面白いかも。

おまけ

今回のサンプルに入っていたもうひとつのミリグモ
アリマネグモ属の1種 Solenysa sp.
こちらも1.5mm弱の小さいクモ。
背甲が腹柄状に伸びて蟻っぽいスタイル。
アリマネグモ属の1種 Solenysa sp.
眼域が突出してる。
潜望鏡みたい。

アリマネグモ属は手持ちの図鑑だとアリマネグモ、カンサイアリマネグモ、キュウシュウアリマネグモの3種類だけど、twitterで見掛けた情報では最近四国からミナミアリマネグモが記載されたとか。
種分化著しい属みたい。

ではまた

2017年11月11日土曜日

触角先端はしゃもじ状・・・キアシナガバチ

今年は10月が雨や台風でろくな散歩が出来てないので
急に初冬が来たような感覚の今日この頃。。

11月の最初の休みに見た虫。
キアシナガバチ Polestes rothneyi
もう飛ぶこともできずに地面を歩いてた。
♀(新女王)は越冬するが、♂は交尾してもしなくても間も無くあの世行き。

確保して撮影して見た。
背面
キアシナガバチ Polestes rothneyi 

腹面
キアシナガバチ Polestes rothneyi 

側面
キアシナガバチ Polestes rothneyi 
腹端の交尾器は引き出してある。

セグロアシナガバチと比べると鮮やかな黄色なので区別しやすいが
沖縄など南方に行くと褐色味が強くなって区別し難いらしい。

キアシナガバチ♂触角の先端
向きを変えると、、、
しゃもじ状に拡がっている。

(「南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説」では団扇(うちわ)状に拡がるとあった。)
セグロアシナガバチの♂触角先端は普通に細いので区別できる。
この区別点は♂のみなので♀については図鑑を参照のこと。

ところでセグロアシナガバチの学名は古い図鑑では Polistes jadwigae とあるが
現在では Polistes jokahamae である。( jok[o]hamae でないことに注意)

おまけ
♂の触角は変な形なものが多く、9月に採った
オオフタオビドロバチ Anterhynchium flavomarginatum の♂は
鉤状に曲がっていた。
交尾の際♀の翅に引っ掛けて、保定に使ってそうな感じ。

だれか観察してないかな?


ではまた

2017年11月3日金曜日

ケチケチ微針専用台

台風のせいで虫ネタがないので標本用品の話でも。

小蛾類などの小型昆虫の標本には、微針という細短い針を使用する。
微針に刺した標本はそのまま標本箱に入れると取扱困難な時限爆弾になるので
普通の昆虫針に取り付ける。

古くはピス(ニワトコという植物の髄)やコルクなどを使用したが、
今では白色ポリエチレンフォームが一般的である。
昔はいちいちカッターナイフで切って作っていたものだが、、

こんな「微針専用台」として切断済みのものが購入できる。
志賀昆虫普及社とか昆虫文献六本脚とかアマゾンとか

1個はこんな。

5mm×20mm。

ただ、私には微妙に大きい気がするので、、、
こんな感じに3つに切断して、
3号の昆虫針を刺して準備しておく。

使用例
適当に標本箱から

背中から見たい虫には細長い方を使い、
横から見たいハエなどには四角い方を使ってます。
ケチケチと一個から3つの標本に使ってます。

ちなみに左はムネアカキアシハバチ  Paracharactus leucopodus、右は、、、

ヒロクチバエ科辺りかと思って検索してみたけどワカラナイ。
どうやらハネフリバエ科 Ulidiidae のよう。
Euxesta anna という学名で検索すると見られる画像とそっくりである。

画像検索で適当絵合わせしただけなので信用しないでね。

ではまた