2016年9月2日金曜日

真っ白なもこもこ。ハゴロモヤドリガ

お盆前の山の日に見かけたベッコウハゴロモ。

左右で微妙に色が違う。

これは!と覗き込むと、、、

思った通りハゴロモヤドリガ Epiricania hagoromo の幼虫がいた。
蛾界では非常に珍しい、他の昆虫に寄生する生態の持ち主である。

久し振りに見たのでお持ち帰り。
翌日にはフィルムケースの壁に営繭し、一週間後に羽化した。

真っ黒けの地味蛾である。
これが同科のセミヤドリガなら、真っ黒な翅ながら青い斑点を散らしたまるで星空のような美麗な種なんだけど。
ただし両種とも鱗粉がとても禿げやすく、きれいな標本は作り難い。

それはさておき羽化後の繭、中身を出してみた。

矢印は蛹化したときの終齢幼虫の脱皮殻。

洗剤を垂らしたぬるま湯に浸けて広げてみた。

頭部の骨化が弱いが、普通に胸脚3対、腹脚4対、尾脚が1対あり、
きわめてノーマルないもむしである。

これをプレパラートにして光学顕微鏡で拡大して見た。
以下顕微鏡画像の目盛りの数字は0.1mm(小さい1目盛りは0.01mm)

ハゴロモヤドリガ幼虫頭部の拡大。

大腮は細いが先端に2歯がある。
個眼は鱗翅目の基本形の6個認められる。(1個は判りづらい)

ハゴロモヤドリガの胸脚

2節に退化しているが爪は発達している。

ハゴロモヤドリガの腹脚

鈎爪は単列の環状で外開きに配列する。
爪の数は28個前後。

ところで栄養摂取の方法はどうしているのか?
ハッキリとした観察事例は未だ無かったと思う。

餌もやらずに死んでしまった寄主のベッコウハゴロモを10%苛性カリ水溶液で炊いて筋肉を溶かし、皮膚に異常がないか観察。

腹端背面の寄生側、カサブタ状の部分(青丸内)がある。
アルカリ溶液で炊いても残っているので、単に体液が乾いたカサブタでは無さそうである。

カサブタ状部分の腹節を広げて拡大

下のカサブタをさらに拡大

左のカサブタの上、節間膜に穴があいているみたい。

あと右後翅裏面

中央辺りの翅脈にも同様のカサブタらしきものがみられた。
青丸部分の拡大。
腹部同様に穴があいているように見える。

昆虫の翅はカラカラの汁気が無さそうな感じであるが、翅脈には体液が通っている。

ということで、多分だけどハゴロモヤドリガはハゴロモに傷を付けて体液を摂取して成長してるんじゃないかなー?
と思う。

あと、大量の白いワックスを分泌するために、ハゴロモの甘いおしっこも飲んでいるんじゃないかと推定してみたり。。。

多産するところで誰かちゃんと観察してくれないかしらん。

ではまた

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