2016年12月31日土曜日

来年もよろしくお願いします。・・テマリエダヒゲムシの1種

年末のかたずけをしていて、一か月前の腐葉土を捨てる前に
ざぁっと実体顕微鏡で流し見たら見つけたもの。

極小のダンゴムシみたいな生き物、の死骸。

裏返すと中身はなく、空であった。
体長は0.7mmほど。背板同士はかなり重なり合っている。

プレパラートにしたらバラバラになってしまった。
左側の第1背板を拡大
立体的なものを押さえつけたので波打ってしまった。
表面の毛はわりと単純な形。

実は生きた状態のものはこの夏に初めて見つけたが、じっくり見る前に死んでしまい、
プレパラートにしたものが下の画像。(以前ツイッターに貼ったもの)
テマリエダヒゲムシ属の1種 Sphaeropauropus sp.
2対の脚がある体節もあるからヤスデに近縁の生き物なのだろうか。
正解は少脚鋼(エダヒゲムシ綱) Pauropoda という小じんまりした動物群に属する。
その中の テマリエダヒゲムシ科 Sphaeropauropodidae に属す。

日本産土壌動物 第二版(東海大学出版部) を読むと、

本科は従来ヨロイエダヒゲムシ科 Eurypauropodidae の1亜科として扱われていたが、
近年は科として扱われるようになっているそうである。

この2科は背板がキチン化して発達し頭部と尾部を覆い隠しているのが特徴。
テマリエダヒゲムシ科はダンゴムシ状に体を丸められることと
背板上に短毛やふさ状の毛状突起があることが特徴で、
ヨロイエダヒゲムシ科では爪状や翼状、小さなキノコ状の突起になるそうである。

日本からはテマリエダヒゲムシ属 Sphaeropauropus が種名未決定種として
沖縄から報告されているそうで、触角球状体の柄長が球状体直径より長く、
全ての歩脚が5節からなることで他から区別されるとのこと。
他にテマリヨロイエダヒゲムシ Thaumatopauropus glomerans (旧称タマヤスデモドキ
またはフクスケニワムシ)の記録があるが、本種はテマリエダヒゲムシ属と
同一である可能性が極めて高い、

とあるので、テマリエダヒゲムシ属でいいと思う。

エダヒゲムシというのは触角にいろいろ突起が付いているための名称である。
上の画像の黄色枠を拡大して見ると
円内のが球状体。

こんな感じで来年もよろしくお願いいたします。<(_'_)>
ではまた

2016年12月24日土曜日

コガタアカイエカ

これといったネタがないので画像フォルダの中から適当に、、、、

今年の10月末に採ったカ

コガタアカイエカ Culex tritaeniorhynchus 
口吻と付節に白帯をもつ。
翅に斑紋はない。
胸部側面に暗褐色部がある。
中脚腿節前面は一様に暗色鱗に覆われる。
腹部各背板は基部に白帯をもつ。
頭頂の直立叉状鱗のほとんどすべては暗色。
口吻の白帯

円内のが頭頂の直立叉状鱗と思う


近似種にニセシロハシイエカ Culex vishunui がいるが、こちらの分布は沖縄以南。
もうひとつの近似種にシロハシイエカ Culex pseudovishnui があるが、
頭頂の直立叉状鱗の中央のものは淡色となることで区別できる、とある。

コガタアカイエカの前翅拡大
翅脈用語
h:肩横脈
C:前縁脈
Sc:亜前縁脈
Rs:径分脈
R:径脈
M:中脈
Cu:肘脈
A:臀脈
翅臀襞:これは翅脈ではなく、翅脈っぽい襞(ひだ)である。


コガタアカイエカは豚舎と田んぼがあれば普通にいるカであるが、
近所では珍しい方である。
ごぞんじ日本脳炎の媒介蚊であるが、近年では脅威はない。

おまけ
コガタアカイエカの顔
金属の球を敷き詰めたような複眼。

ではまた

2016年12月17日土曜日

スネアカキンバエ

台所で捨てられる寸前の傷んだ鶏肉を救出したので、
お散歩のついでに倒木の上に置いて様子見。

さすがに寒いので訪れるハエは少ない。

クロバエの1種。
これは♀なので同定放棄。


キンバエの1種。♂
スネアカキンバエ Lucilia porphyrina  と思う。

同一個体
スネアカキンバエ Lucilia porphyrina  と思う。

キンバエ類のオスには複眼がくっ付き気味の種と離れている種がいる。
これはくっ付いている方の種類。

曇り無き眼で見ると、タマムシとかと同じ金属光沢で美しい虫なのだが、、、、

さて他にネタも無いのでキンバエの同定をしてみた、
んだけど、仕事終りに撮った画像を入れたハードディスクを会社に置いてきてしまった。。。

来週この下に追記します。

さて続き、、、
背面拡大
ac:中刺毛 acrostichal seta
dc:背中刺毛 dorsocentral seta
ia:翅内刺毛 intra-alar seta
翅内刺毛の前方は前翅の直上に並ぶ翅背刺毛の延長上に交差する(点線部)。
この肩瘤に沿って生える刺毛は肩後刺毛と呼ぶようだ。
ちょっとややこしや。

中胸背板は盾板(じゅんばん)と三角形の小盾板(しょうじゅんばん)からなる。
ハエ類では盾板に横溝で前後に区分され、前方が「横線前域」、
後方を「横線後域」と呼び、背板の刺毛はその前後に分けて数える。
例えば、、
ac;2+3、dc;3+3・・・・・などと表記する。

ちなみに ac;0+1(中刺毛が後方に1対のみ)ならイエバエ科の可能性が高い。

側面

四角の部分を拡大

spl:中胸下前側板(腹胸側板) meso-katepisternum
hpl:中基副節(下側板) mid meron (hypopleuron)
後胸側板(後胸前側板) metapleuron
mts:後気門 posterior spiracle
ssc:中胸下側背板 katatergite (fentral area of laterotergite)
ppl:中胸下後側板(翅側板) meso-katepimeron

略号は日本のイエバエ科より引用、また()内は原色ペストコントロール図説の表記。

脚部拡大
生態写真では判りにくいが、乾燥すると脛節が赤褐色である。

原色ペストコントロール図説にキンバエ族Lucilini の重要な6種の検索があり
それに沿うとスネアカキンバエとなった。

それより特徴を抜粋すると、
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後胸側板(後胸前側板)に細毛がない(あるのはトウキョウキンバエ)

横線後域の中刺毛は2対:キンバエ属(3対なのはヒロズキンバエ属)

鱗弁は黄色または褐色、♂の複眼は接する。
(鱗弁が白色で♂の複眼間が離れるのはミドリキンバエ)

♂の第2生殖背板は小さく金緑色光沢を欠き、脛節は褐色。
(♂の第2生殖背板は大きく金緑色光沢を持ち、脛節は黒色なのはキンバエ)
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おまけ、スネアカキンバエの♂交尾器 側面
スネアカキンバエのオス交尾器 後方から
スネアカキンバエの第5腹板


ではまた

2016年12月10日土曜日

落ちてる羽毛は宝物

と、そこまで大層では無いけれど、、、
お散歩中に時折見掛ける散乱した羽毛。
以前見掛けたある虫を捜しているので気を付けて見ているのだが、中々再会できない。
今回はドバトと思われる。
虫眼鏡で見ても変わったところは無いけれど、
小さなダニが付いているかも知れないのでいくつか持ち帰った。

会社の机に置いておいたら、早速上司が見つけて持って行かれた。。。

がしばらくして「欲しいダニはついとらん。ハジラミだけじゃ。」と、戻ってきた。

それではと見ると、ハジラミが2種。
まずひとつめ、

ハトナガハジラミ Columbicola columbae (Linnaeus,1758)

体長は約2.5mm。
光が当たるとスルスルと裏側に隠れて撮りにくい。
胸部に長毛が直立している。
帆掛け舟みたい。
命名者がかのリンネとか由緒正しいやないかい。

ガラス板に挟んで撮影
ハトナガハジラミ Columbicola columbae 背面

ハトナガハジラミ Columbicola columbae 腹面
どこが頭か胸かこんがらかる体形をしている。
これは、ハジラミは中胸と後胸が癒合しているためで、
ハトナガハジラミではさらに頭部が長くて触角基部で
仕切られているように見えるため、余計に変に見えるのだろう。

以前はハジラミ類はハジラミ目(食毛目)MALLOPHAGAとして独立した目だったが
今はシラミ目 PHTHIRAPTERAにまとめられている。
また、チャタテムシ目とも統合する説もあるようだが詳しくは知らない。

本種はホソツノハジラミ亜目 Ischnocera に含まれ、 咀嚼型の口器で口吻はない、小顎肢はない。触角は頭部両側から露出。
の特徴があり、 世界で3000種!?いるとのこと。

その中で、触角5節、付節の爪は2本のものが
チョウカクハジラミ科 Philopteridae だそうだ。

光学顕微鏡で見たハトナガハジラミの前半部。
触角は5節。

後脚の拡大。
爪は2本ある。

本種は図鑑にも図板があり、ドバトに普通に見られる種類で世界中に分布するそうだ。

ちなみにヒトジラミでは胸部はすべて癒合して1節になっているそうだ。

2種目はこんなの。こちらはおそらく
?ハトマルハジラミ Campanulotes compar (Burmeister,1838)
と思われる種。頭の形が銅鐸型。体長約1.5mm。

手持ちの図鑑類には載っていないが、日本産野生生物目録に名前だけ載っている。
学名で検索すると似た画像が見られるのでたぶんあっていると思う

光学顕微鏡で見たハトマルハジラミと思われる種。

体長は約 1.5mm。

頭部拡大
触角は5節。
爪は2本。


ではまた

2016年12月3日土曜日

樹皮下のヒメチビヒラタエンマムシ

11月最後の日曜日は雨予報だったので、前日の土曜日にお散歩。
季節がらこれといった虫がいない。

しょうがないので虫屋なら跨いでいくようなニセアカシアの倒木の皮を捲ってみた。
何かの壊れた蛹?
無弁類のハエの囲蛹と思われるが何か判らない。

あと小型のミズアブ科幼虫とか
これも親になるまで判らない。親になっても判らないかも? 7mmほど。

1匹だけいた甲虫
エンマムシ科。平べったいので樹皮下が好きそう。

持ち帰って撮影。
ヒメチビヒラタエンマムシ Platylomalus mendicus

体長は腹端までで2.3mmほど。
チビヒラタエンマムシ属 Platylomalus は日本産6種。
「甲虫ニュース」の120号に検索表があったのでそれを参考に同定した。

裏側
ヒメチビヒラタエンマムシ Platylomalus mendicus

ではまた

2016年11月26日土曜日

子供の生活範囲はフジの小葉半分・・・フジツヤホソガ

日曜日、お散歩中に見かけた実生の小さなフジ。
寒くなってだいぶくたびれている。
茶色くなった部分の中心に不自然な丸い模様。

透かして見ると、、、、
フジツヤホソガ Hyloconis wisteriae の幼虫

いくつかあるので他のも透かして見るとこちらは、
フジツヤホソガ Hyloconis wisteriae 
こちらは蛹になっているようだ。

つまり、この丸い円盤は本種の繭である。

持ち帰って裏面から見ると、
繭の部分は糸を貼りめぐらせて補強しているのが判る。

本種は葉っぱに潜る、いわゆる「絵描き虫」、「字書き虫」の仲間。
この生活スタイルは蛾だけでなく、ハチや甲虫、ハエの中にも見られる。
いずれもサイズが小さく、少しの量で親になれるのでエコ?な虫たちである。



図鑑によると、同属に以下の3種がいる。
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ハギツヤホソガ Hyloconis lespedezae
食草は同じマメ科だけどマルバハギにつくとのこと。

ヌスビトハギツヤホソガ Hyloconis desmodii
こちらの食草はヌスビトハギ。やっぱりマメ科。

クズツヤホソガ Hyloconis puerariae
本種はクズ、ヤブマメにつく。
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この属はマメ科に固執してるみたい。
生態はほぼ同じで潜葉の中央付近に円盤状の繭を作る。
成虫は似通っているが、付いていた植物とこの繭の特徴があれば自動的に種類が判る。
図鑑には細かく成虫の特徴がそれぞれ書いてあるが、
クズツヤホソガ以外の触角は先端に白色部があり、
クズツヤホソガの触角は一様に黒褐色とのこと。

ほんとは羽化した成虫を待って記事にしようと思ったけど、
ネタがないのでとりあえず。。。

ではまた
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2017年4月8日 追記
羽化したので画像上げました。
記事はコチラ→「フジツヤホソガの成虫
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2016年11月19日土曜日

ヤマトハナゲバエ?

先日見かけたイエバエ科の1種。
橙色みがかっている。
採集したので以下死体の画像。
背面

胸部背面

胸部側面

小楯板側面
側面から下は毛があるかないか、、微妙

翅脈

第5腹板と交尾器
♂でした

引き出した状態の交尾器側面

「日本のイエバエ科」とか、一寸のハエにも 五分の大和魂・改の過去ログなどを
つらつら読んで、部分的な色彩や形態に疑問があるが、

ヤマトハナゲバエ Dichaetomyia japonica

あたりに落ち着いた、けどまったく自信がない。

おまけ
ヤマトハナゲバエ?の顔

どの辺が鼻毛?

ではまた